「教科学習」と「探究学習」の間をHADOでつなぐ。 自分の学びをデザインできる子どもたちを育てる
変化の激しい社会を生き抜くために、総合的な学習=探究学習がより重要な役割を担うと文科省でも定められている昨今。「学びをデザインする子ども」の育成をめざす東京学芸大附属世田谷小学校では、2020年から協働的探求「Laboratory(以下、ラボ)」を開設。その中の「未来ラボ」の児童たちがHADOを体験しました。どんな学びにつながったのでしょうか?
先進的な学びと子どもの自主性・主体性を育む教育で知られている東京学芸大学附属世田谷小学校。3年前に文部科学省の研究開発学校指定を受け、未来社会を創造的に生きるために教科と学年を超えた協働的探求「Laboratory(以下、ラボ)」という学びの場を開設しました。
ラボとは4〜6年生の子どもたちが、学びのvisionにせまる道筋を自分でデザインする活動。自分の学びたいことが実現できる研究室に所属し、異学年の仲間と共に学び進めていくスタイルです。いわば、大学の研究室(ゼミ)のような取り組みを小学生から行っているのです。
そんな中、2030年の暮らしを考え創造する「未来ラボ」というラボで、「未来のスポーツ・未来の体育」を考えるために4〜6年生26名がHADOを体験しました。子どもたちからはどのような「未来」が見えたのでしょうか。担当の佐藤文恵先生にお話を伺いました。
Q 「未来ラボ」でHADOを導入された理由を教えてください。
2019年夏に本校体育部主催で教員向けのHADOセミナーを開催したことがあり、HADO自体は知っていました。導入した理由は3点あります。
1、運動スキルに全く左右されず、運動が苦手な子どもも楽しくできること。
2、ルールがシンプルでやさしいゲームだが、局面を判断して戦術を考えるおもしろさがあること。
3、ARスポーツ=子どもが興味のある分野であること。
また、未来ラボで導入する上では単なる「ARスポーツ=未来スポーツ」というのではなく、男女差・年齢差・能力差なく楽しめるスポーツと捉え、さらには「アダプテッドスポーツ=未来スポーツ」という夢もあり導入しました。
Q HADOのどういったところにメリットを感じましたか?
日常の体育の授業でも運動の経験値(習い事など)や運動スキルの差がでてしまいますが、参加者全員が体験したことがなく、スタート地点が同じという点で非常にメリットを感じました。また「夢を語れる高学年が減少していきている」という現状もありました。
最近の子どもたちは高学年にもなると、「サッカー選手になりたい」という夢の実現がクラブチームに入る難しさや自分のレベルに気づくなどの現実が見えてくることで、夢を語れなくなってしまう傾向があります。HADO自体が「カメハメ波を打ちたい」という少年の頃からの社長の夢をテクノロジーの力で叶えているので、そこは子どもたちにとって夢を実現できるという思いは、心を揺さぶられますよね。
Q 実際に体験した子どもたちの反応はいかがでしたか?
普段、運動が苦手な子どもたちが笑顔で楽しんでいた姿が印象的でした。投力や瞬発力など関係なく、また接触プレイがなく楽しめるのがいいですよね。翌日、チームで振り返りをした時に「HADOの未来」まで発展していったのには驚きました。「アップルウォッチみたいにデバイスが小さくできるといい」「公園にフラッと立ち寄って誰もができるようになればいい」「それ、いつでも・どこでも・だれとでもだね」など、アイディアや感想がたくさん飛び交っていました。自分たちの研究とどこまでつながったかはわかりませんが、いつかどこかでヒントになるかはわかりませんので、とにかく今はタネまきの時と思って、さまざまなことを経験させたいです。
Q HADOを通じて、子どもたちにはどんな成長がみられましたか?
今は見たいものがなんでもタブレットで見て学べる時代ですが、実際に体験して学ぶのでは全く違います。自分の目で見て、やって感じてみる、机上の上だけで知るのではなく、ARを体験することが子どもたちにとにかく刺激になり、視野が広がり多角的に物事をみることにつながったと思います。私の反省としては、体験の時間をもっとゆっくり取って、何試合もさせてあげたかったですね。
Q HADOを取り入れたことで、新たな気づきはありましたか?
子どもたちの学びの点と点って、つながるようでなかなかつながらないんです。だからこそ、点と点を線でつなげてあげることが教師の役割だと思っています。今回でいうと「(体育や算数などの)教科学習」と「(探求学習などの)ラボ」の間に「HADO」を導入して点がつながると、教科学習も楽しくなり主体的に学び始めます。教科学習との往還ですね。子どもに根ざした探究的な学びにより持続的に学びを愉しみ、学習観を醸成するのだと思います。ここのサイクルをどんどん回していけば、自発的に学びをデザインしていけますから、それまでの間、子どもたちの学びを支えていくことが大切だと痛感しました。
Q 最後に、学校の学習で導入したいと考えている先生方にアドバイスを
自分の興味のあることや好きなことを学校で学べるって、本当に素敵なことだと思います。しかし、その子どもの思いに応え実現するには、人員も時間も足りません。そこで、学校外のツールやサービスをどんどんと利用していけたらと思っています。案外、学校教員は異業種のみなさんとのつながりが薄いので、ご協力をいただける企業とつながれていないのが実状だと思います。まずは教員のみなさんがさまざまなアンテナを張り巡らせて、情報を収集すること、そして体験してみることが大切だと思います。HADOはアカデミージュニアクラスを開講しているだけあって、スタッフの皆さんの言葉掛けなどの対応がとても丁寧です。ですから安心してお願いすることができましたので、先ずは先生方がどんどん体験して、学びとして取り入れていってはいかがでしょうか。
(聞き手:飯田りえ)
スポーツ大会、探求学習、修学旅行など数々の事例がございます。
まずはお気軽にご相談くださいませ。