自ら課題を発見し、解決する力を育てる「探究」の授業で テクノスポーツ「HADO」を導入した中学校の思惑とは
拡張現実「AR」の技術を実社会にどう活用できるか? これからの社会課題の解決を考える中で、HADOを授業プログラムに取り入れ始めた中学校があります。
「まずは子どもたちに体験させたかった」そう語る芝浦工業大学附属中学高等学校(以下、芝浦中)の横山浩司教諭。これからの時代に必要な「教育現場におけるHADOの有効性」とは?
スーパーグローバル大学に指定され「世界で活躍する技術者の養成」を掲げている芝浦工業大学。その附属校として注目の芝浦中では、2022年4月から中学2年生の「SHIBAURA探究」という授業でHADO体験を導入されています。
理工系人材を育成していく上では、子どもたちにARやVRといった最先端技術に、「とにかく興味や関心を持ってほしい」と考えています。しかし、教育に取り入れる上で、AR技術なら何でもよいわけではなく、HADOだからこその意味があるのだとか。横山先生に詳しくお話を伺いました。
これからの社会に大切な「課題解決」を学ぶ上でのAR体験
Q まずHADOを導入した「SHIBAURA探究」というのは、どういう科目ですか?
これからの時代に最も必要とされる、自ら課題を発見して解決する力を育てる科目です。その探究の中でもITとGC(グローバルコミュニケーション)の2種あり、ITの分野で導入しました。
あらゆる社会課題をテクノロジーで解決する生徒を育てたいので、できるだけ多くのITツールに触れられるプログラムを用意しています。
Q ほかにはどのようなITツールを取り入れていますか?
プログラミング言語のScratch(スクラッチ)を使ったドローン制御や、3DCADと3Dプリンターで物づくり、ほかにも物理のシミュレーションソフトやデータサイエンスなど、最新の技術に触れています。
学年が上がると自分達のアイデアをテクノロジーを使って実践するフェーズに入るので、ただ楽しく体験するだけではなく、デザイン思考を取り入れながら考える要素が必要になります。
Q ほかのAR技術ではなくどうしてHADOだったのでしょうか?
アミューズメント性の高いARも体験しましたが、重たい機材とエンタメ色の強すぎる内容で、学びに広がりそうにありませんでした(苦笑)。
一方、HADOはゴーグルとスマホアプリというシンプルな構造で、見えている世界はそう違わないのに、自分の力が拡張されます。「どうなっているんだろう」「どういう仕組みなんだろう」と子どもたちの知的好奇心をかき立てられますし、何よりもかっこいいですよね! 担当の先生たちと体験した時に、まず自分たちが魅了されました。
体験する中で、想像以上に子どもたちが主体的に学び始めた
Q 実際に体験した子どもたちはどんな反応でしたか?
当日は午前と午後に分かれて2クラス80名ずつ、HADO ARENA お台場店で2時間体験させてもらいました。体験前から非常に興味を持っていて、半数以上の学生がHADOのことを下調べしたり、予習してから参加していました。
とは言え、「参加したくない子や興味のない子も一定数いるかな」と思っていたのですが、全員が試合に夢中になり、友達を応援したりプレイしたり、男女共に楽しんでいました。最後は先生vs生徒で対戦して、それはもう、大盛り上がりでしたよ(笑)。
Q 体験後、子どもたちにはどんな成長がみられましたか?
全体的にHADOの仕組みに興味を持っている子どもたちが多く、「位置情報はどうやってとっていますか?」「ジャイロ(角速度を検出する仕組み)を使っているんですか?」など、スタッフの方に高度な質問をし、熱心にメモをとっている子どもたちもいました。普段はおとなしい印象の子どもたちですが、積極的に質問している姿に成長を感じましたね。
その後の授業でも「こういう課題に対してARを使って解決できるのではないか」「学校見学の時にも使えるのでは」といった具体的な案も出てくるようになりました。
Q 授業に導入する上で「もっとこうすればよかった」など改善点はありますか?
テクノロジーに注目しがちだったのですが、チームスポーツとして楽しむ側面も伝えればよかったかなと思います。チームで戦略を立てるとか、トーナメント戦にするとか、今後はスポーツとしてHADOの要素をプラスしていこうかなと思います。
先端技術を授業で取り入れるとなると、我々教師も日々学びながらカリキュラムを作っていくので、生徒たちの反応をみながら作り上げています。我々と同時期に芝浦工業大学の体育の授業でHADOが導入されたので、来年以降は大学の方でも体験しようと思っています。
それぞれの学校の教育目標に合わせられる、教材としてのHADO
Q 教育現場でのHADOは、どういったところに魅力がありますか?
「ただ、遊ばせるだけじゃない」ところが最大の魅力です。テクノロジーの側面とチームスポーツとしての側面、コミュニケーションツールとしての側面など、何を生徒たちにできるようになってほしいか。それぞれの学校の教育目標に合わせられるので、教材として非常に扱いやすいと思います。
これからの時代、理系・文系の垣根もなくなってくると思います。そうなってきた時にこうした最先端な技術を、さまざまな学校でも取り入れていかなければならなくなると思います。
Q それでは最後に、今後HADOに期待することを教えてください。
部活としてHADO部とかがあったり、学生向けの全国大会があったりすると面白いですよね。それぐらい、一般的に広まればいいなと思います。
実は高校の方でも、テクノロジーとか実社会とのつながりを強く意識した科目でHADOを取り入れています。芝浦工大の先生がARやVRの講演もしてくださり、高大連携の人気プログラムになっています。ほかの学校でも、どんどん取り入れていって欲しいですね!
(聞き手:ライター飯田りえ)
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