自治体のeスポーツ活用事例|地域活性化につなげる方法と導入のポイント

自治体がeスポーツを活用する動きは、地域活性化だけでなく、高齢者の介護予防や若者の居場所づくり、障害者の社会参加など、さまざまな行政分野に広がっています。
一方で、担当になったものの、ほかの自治体がどの課題にどう結びつけているのか、続けるには何が必要なのかがわからず、検討が止まっている方もいるでしょう。
この記事では、全国の自治体の取り組みを8つの行政課題に分けて紹介します。

自治体のeスポーツ活用事例|地域活性化につなげる方法と導入のポイント

自治体のeスポーツ活用事例|地域活性化につなげる方法と導入のポイント

自治体がeスポーツを活用する動きは、地域活性化だけでなく、高齢者の介護予防や若者の居場所づくり、障害者の社会参加など、さまざまな行政分野に広がっています。
一方で、担当になったものの、ほかの自治体がどの課題にどう結びつけているのか、続けるには何が必要なのかがわからず、検討が止まっている方もいるでしょう。
この記事では、全国の自治体の取り組みを8つの行政課題に分けて紹介します。

自治体がeスポーツを活用する理由

年齢や障害の有無を問わず一緒に参加でき、若者施策から高齢者福祉まで複数の行政課題に生かせるためです。
兵庫県eスポーツ推進検討会の資料は、eスポーツが2019年の茨城国体の文化プログラムに採用されて注目を集め、その後、自治体が地域活性化や多世代交流に活用する事例が見られるようになったと整理しています。

年齢や性別、障害の有無を問わず一緒に参加できるから

eスポーツは、年齢や性別、障害の有無によらず、同じ場で一緒に楽しめる点が特徴です。
神奈川県はこの点に着目し、年齢や国籍、障害の程度にかかわらず誰もが参加できるeスポーツを、「ともに生きる社会」の実現に向けた施策に活用しています。

若い世代との接点をつくりやすいから

兵庫県の資料では、10〜30代の若年層から人気が高いことが、eスポーツの特徴のひとつに挙げられています。
東京都江戸川区が2019年度に区内の中高生2万人を対象に行ったアンケートでも、中高生向けの交流施設に求めるものとして、eスポーツを希望する意見が最も多く集まっています。

出典:東京市町村自治調査会

住民の理解を得やすい分野で活用できるから

東京市町村自治調査会が多摩・島しょ地域の住民に行った調査によれば、6割以上が自治体によるeスポーツの活用に肯定的です。
特に、高齢者福祉や障害者の社会参画支援、多世代交流・多文化共生、教育を目的とした取り組みは、住民に受け止められやすいと分析されています。

出典:東京市町村自治調査会

既存の施設や集まりの場で小さく始められるから

大きな施設を新たに整備しなくても、公民館や集会所など、地域にある場を使って小さく始められます。
石川県小松市は、市内185か所で開かれている高齢者の「いきいきサロン」に講師を派遣する出張講座を2022年11月から実施しており、調査時点の年間予算は100万円程度でした。

出典:東京市町村自治調査会

【行政課題別】自治体のeスポーツ活用事例

【行政課題別】自治体のeスポーツ活用事例

交流人口の拡大や若者の居場所、教育、介護予防、障害者の社会参加など、全国の自治体が課題別に活用しています。
まずは早見表で、分野ごとの目的と代表的な事例を確認しましょう。

分野 主な目的 主な事例 成果指標の例
交流人口・関係人口 県外からの来訪と滞在 富山県の補助制度、埼玉県の4会場同時開催フェス 県外からの参加者数、宿泊者数
若者の居場所 中高生の交流、孤立の防止 江戸川区の中高生交流施設 利用者数、継続利用率
教育・人材育成 部活動の選択肢、デジタル人材の育成 横須賀市、渡嘉敷村、群馬県 部員数、講座の修了者数
高齢者福祉 フレイル予防、生きがいづくり 西東京市、小松市、東京都 参加者数、継続参加率、満足度
障害者の社会参加 施設での活動、障害のない人との交流 愛媛県、埼玉県 導入施設数、大会の参加者数
世代間交流・多文化共生 世代や国籍を超えた交流 調布市、神奈川県 世代別・国籍別の参加者の割合
まちづくり 公共空間のにぎわい、地域のPR 群馬県、埼玉県 来場者数、マップの利用状況
結婚支援 出会いの機会づくり 神奈川県 参加者数、成立数

成果指標の例は、事業を設計する際の目安として整理したものです。
各分野の具体的な取り組みを、以下で順に紹介します。

交流人口・関係人口の拡大|富山県の補助制度、埼玉県の4会場同時開催フェス

県外から人を呼び込み、地域と継続的に関わる人を増やすために、eスポーツのイベントを活用する例です。
富山県は、地域の観光資源を生かしたeスポーツイベントで関係人口を増やすため、「eスポーツ関係人口創出事業補助金」を設けています。
対象は市町村を構成員に含む実行委員会などの組織で、観光資源の活用、県外で開かれるeスポーツイベントとの連携、県外在住者へのデジタルを使った情報発信が要件です。
埼玉県は2026年2月、県内の商業施設4会場を生中継でつなぐ「SAITAMA e-sportsリンクフェス2026 Winter」を開催しました。
会場間の対戦に加え、初心者向けの体験会や高齢者向けの会場も設け、1つの会場に集めるだけでは届かない広い地域に参加の機会をつくっています。

出典:

  • 富山県「eスポーツ関係人口創出事業補助金」
  • 埼玉県「eスポーツ」

若者の居場所づくり|江戸川区の中高生交流施設

若者施策では、中高生が気軽に立ち寄れる居場所にeスポーツを取り入れ、交流や成長の機会につなげる取り組みが代表的です。
東京都江戸川区は2021年度から、中高生を主な対象とした交流拠点「共育プラザ」の全7館にeスポーツを導入しています。
館ごとにコーナーの設置や曜日を決めた活動などを行い、館の対抗戦も開かれています。
障害者就労支援センターや、誰もが気軽に集える地域拠点「なごみの家」との交流を通じて、高齢者との世代間交流も生まれました。
共育プラザ中央では、利用ルールの運用や大会の企画・運営に中高生自身が関わり、指導員が見守り役を担っています。
東京市町村自治調査会の報告書は、学校の枠を超えて中学生と高校生が仲良くなったことを導入の効果に挙げました。
若者を「利用する側」にとどめず「運営する側」に招く設計は、ほかの自治体でも取り入れやすい工夫です。

出典:東京市町村自治調査会「地域課題の解決に向けたeスポーツの可能性に関する調査研究報告書」

教育・デジタル人材育成|横須賀市の高校eスポーツ部、群馬県の実況者育成

部活動の選択肢を増やしたり、配信や大会運営のスキルを学ぶ場をつくったりと、教育や人材育成に生かす例も増えています。
神奈川県横須賀市は2019年12月から「Yokosuka e-Sports Project」を進め、市内の県立高校14校のうち10校にゲーミングPC一式を貸し出して、eスポーツ部の設立を支援しています。
全国の高校生を対象としたオンライン大会も市が主催し、配信の視聴数は2021年の4,000回から2023年には11万回に増えました。
大会への参加をきっかけに、配信や音楽などの関連産業に関心を持つ部員もいます。
沖縄県渡嘉敷村では、部活動がバドミントン部だけだった中学校で、2022年度にeスポーツのオンライン部活動を実証しています。
島内の公民館に集まった中学生を沖縄本島の高校eスポーツ部のコーチがオンラインで指導し、運動が苦手な生徒も参加できる部活動の選択肢をつくりました。
群馬県は、eスポーツ実況者の登竜門となる「全日本eスポーツ実況王決定戦」を開いているほか、就職氷河期世代を対象に「eスポーツから学ぶイベントマネジメント&配信業務」という就労支援プログラムも実施しました。

出典:

  • 東京市町村自治調査会
  • 群馬県「eスポーツ推進ポータルサイト」

高齢者の介護予防・生きがいづくり|西東京市・小松市の講座、東京都のシニア交流大会

高齢者福祉の分野では、フレイル予防を目的に、普段の集まりの場でeスポーツを楽しむ取り組みが広がっています。
東京都西東京市は2022年度から「健康eスポーツ事業」として、高齢者が集まる場に出向く講座を開いています。
ゲームの経験がなくても直感的に操作できるよう、太鼓型やハンドル型の専用コントローラーがあるタイトルを選び、ゲームに体操の要素も組み合わせました。
2022年度の参加者アンケートでは、「満足」「やや満足」が合わせて84%、再び参加したいと答えた人が91%にのぼりました。
石川県小松市の出張講座では、従来のサロン活動に参加が少なかった男性が加わる例や、eスポーツをきっかけにスマートフォン教室へ参加する高齢者も見られます。
デジタル機器に慣れる入り口になる点も、ほかの福祉施策と組み合わせやすい長所です。
東京都は、60歳以上を対象とした「TOKYO縁ジョイ!」2026東京都シニア・コミュニティ交流大会に、新たにeスポーツを加えました。
神奈川県も2024年に、高齢福祉課の所管でシニア向けeスポーツの全国大会を開き、会場には認知症未病改善のPRブースも設けました。

出典:

  • 東京市町村自治調査会
  • 東京都「シニア・コミュニティ交流大会 TOKYO縁ジョイ!参加者募集」
  • 神奈川県「県内初のシニア向けeスポーツの全国大会を開催!」

障害者の社会参加・インクルーシブ|愛媛県の障害者施設への導入支援

障害のある人の活動の幅を広げ、障害のない人との交流を生む手段としても、eスポーツは活用されています。
愛媛県は2020年度から、eスポーツに取り組む障害者施設をモデル施設に認定し、機器の無償貸し出しや導入支援、イベント開催の補助(補助率4分の3)を行っています。
取り組む施設は、2020年度の4施設から2024年1月時点で64施設に増えました。
重度の障害がある人向けには、県内の企業や大学と連携してオーダーメイドのコントローラーを開発しています。
県が主催する大会では、障害のない人も参加する個人戦で、障害のある参加者がベスト4に入りました。
埼玉県も、eスポーツを障害者の支援に活用したい人向けの相談窓口を、スポーツ振興課に設けました。

出典:

  • 東京市町村自治調査会
  • 埼玉県「eスポーツ」

世代間交流・多文化共生|調布市の多世代交流、神奈川県のベトナムフェスタ連携

世代や国籍が違う人どうしが同じゲームで遊ぶことで、普段は接点のない人が出会うきっかけが生まれます。
東京都調布市は2022年度から「包摂的な市民交流・体験機会創出事業」として、高齢者の交流施設や多世代施設、中高生の居場所でeスポーツの体験会を開き、施設どうしをつなぐ交流イベントも実施しています。
施設からは、普段来ない子どもや不登校気味の子どもがイベントをきっかけに訪れたという声が寄せられ、施設間の交流では子どもと高齢者の対戦も実現しました。
神奈川県は2026年9月、「ベトナムフェスタin神奈川2026」と連携して「かながわeスポーツ交流ひろば」を開催しました。

出典:

  • 東京市町村自治調査会
  • 神奈川県「eスポーツ活用の取組み」

まちづくり・公共空間の活用|群馬県の「eスポーツ酒場」、埼玉県のご当地マップ

庁舎や町並みといった地域の資源を、eスポーツを通じて新しい形で見せる取り組みもあります。
群馬県は、県庁の昭和庁舎の壁面にゲームの映像を投影してeスポーツ対決を行う「eスポーツ酒場」を共催し、キッチンカーによる飲食の提供も組み合わせて、2024年度は4回開きました。
埼玉県は、深谷駅や川越の町並みを舞台にしたFORTNITEのオリジナルマップと、秩父や川越を走るバーチャルサイクリングのコースを公開し、イベントでの活用も呼びかけています。
ゲームの中で地域の風景に触れてもらう、新しいPRの形です。

出典:

  • 群馬県「eスポーツ推進ポータルサイト」
  • 埼玉県「eスポーツ」

結婚支援|神奈川県の「eスポーツでつながる恋活」

結婚支援のように、福祉やスポーツ以外の分野でeスポーツを事業に取り入れる例も出てきました。
神奈川県は、県の結婚支援事業「恋カナ!プロジェクト」で、2026年8月に「初心者歓迎!eスポーツでつながる恋活@ヨコハマeスタジアム」を開催しました。
使用ゲームは「Fall Guys」です。初心者の参加を前提にしている点から、競技よりも交流を重視した企画であることが読み取れます。

出典:神奈川県「eスポーツ活用の取組み」

このほか、体を動かすARスポーツ「HADO」を使った自治体の取り組みは、後半の章で取り上げます。eスポーツ以外も含めて地域イベントの企画を幅広く考えたい方は、町おこしにぴったりなイベント企画40選!も参考にしてみましょう。

体を動かす「体感型eスポーツ」とは

体を動かす「体感型eスポーツ」とは

体感型eスポーツとは、ARやセンサーなどの技術を使い、実際に体を動かして対戦・プレイするeスポーツです。
コントローラーやキーボードを使う従来のeスポーツに比べ、ゲームに詳しくない人も直感的に参加しやすい点が特徴として挙げられます。
AR・体験型eスポーツと呼ばれることもあります。

画面の前で操作するeスポーツとの違い

画面の前で操作するeスポーツとの主な違いは、操作の方法と、プレイ中の体の動かし方です。

項目 画面の前で操作するeスポーツ 体感型eスポーツ
操作の方法 コントローラー、キーボード、タッチ操作など 腕や体の動きをセンサーなどで読み取る
体の動き 画面の前で、手元の操作が中心 コートや会場の中を動き回る
必要な場所 机と画面、通信環境 プレイスペース、待機場所、観戦用の画面
向いている目的 大会、オンライン交流、部活動 体験会、健康づくり、多世代交流
見ている人の楽しみ方 実況や解説があると伝わりやすい 動きが見えるため、初めてでも状況を追いやすい

どちらが優れているというより、事業の目的によって向き不向きが分かれます。
オンラインで地域の外とつながりたい場合は画面型、健康づくりや体験会を重視する場合は体感型が候補になります。
HADOも、ヘッドセットとアームセンサーを装着し、体を動かして対戦する体感型eスポーツのひとつです。

健康づくりや運動習慣の施策と結びつけやすい

体感型eスポーツは、遊びながら自然に体を動かせるため、健康づくりや運動習慣づくりの施策と組み合わせやすい種目です。
画面型のeスポーツでも、西東京市のように講座でゲームと体操を組み合わせる工夫が見られます。
実際に、普段はスポーツをしていなかったけれど、HADOを始めて運動習慣ができたとおっしゃる方は多いです。
適度に体を動かすので参加者の健康にも寄与でき、高齢者向けの運動促進ツールとしても十分活用できると私は考えています。

「体を動かすeスポーツ」を施策に位置づける自治体も出てきた

埼玉県は、eスポーツを体を動かすことに活用したい人向けの相談窓口を、スポーツ振興課に設けています。
県が公開しているバーチャルサイクリングのコースも、体を動かしながら楽しむeスポーツの一例です。
東京都豊島区は2026年、生涯学習・スポーツ課に「アーバンスポーツ・eスポーツ推進グループ」を新設しました。
区は、スポーツの要素が高く、誰でも気軽に楽しめる身体活動を伴い、心身ともに健康の維持増進につながるものを「豊島区のeスポーツ」として捉えています。
eスポーツをスポーツ振興や健康づくりの枠組みで扱う動きは、体感型の種目と相性のよい流れです。

出典:

  • 埼玉県「eスポーツ」
  • HADO公式「豊島区初のアーバンスポーツ拠点『裏トシマ』にHADOを正式導入」

画面型の種目と組み合わせると参加の幅が広がる

画面の前で遊ぶ種目と体を動かす種目を組み合わせると、得意なことが違う人も同じイベントに参加しやすくなります。
地域の経済団体である福井商工会議所は、若い世代が参加しやすい会員交流の場として企業対抗のeスポーツ大会を企画し、2023年はパズルゲームの「ぷよぷよeスポーツ」とHADOの2種目で開催しました。
31事業所・46チームの138名が参加し、2024年はHADOと、自転車をこいでキャラクターを操作する陣取りゲームの2種目で実施しています。
自治体の事業でも、種目の組み合わせ方しだいで参加者の層を広げられます。

出典:

  • 福井商工会議所「会員交流eスポーツ大会2023 開催レポート」
  • 福井商工会議所「会員交流eスポーツ大会2024 開催レポート」

eスポーツにどのような種目があるかを知りたい方には、eスポーツの種目とは?の記事がおすすめです。

ARスポーツ「HADO」を活用した自治体の事例

ARスポーツ「HADO」を活用した自治体の事例

宇陀市の全国大会や中野市の学校間交流、豊島区の若者の居場所づくりなど、HADOは自治体事業でも使われています。
HADOは、手元から放つエナジーボールやシールドを使って対戦するARスポーツです。
世界40カ国で展開し、累計プレイヤーは約1,000万人、教育現場では2,000校以上で活用されています。

奈良県宇陀市|体験会から全国大会、デジタル体験事業へ段階的に広げた

奈良県宇陀市は、HADOを一度きりの催しで終わらせず、体験会から全国大会、デジタル体験事業へと段階的に広げてきました。
2023年10月に市民や学校関係者、他自治体の行政視察の担当者を対象とした無料体験会を開き、翌2024年3月23日には、宇陀市の主催、一般社団法人公民連携推進機構の共催で全国大会「UDA CUP」を開催しています。
会場の市立榛原小学校の体育館には、関東から沖縄までの28チーム約100人が集まりました。
共催団体は、県外から参加した中高生の宿泊費を負担し、市内の観光地を回る校外学習も実施したと報告しています。
一般の参加者からも、宿泊して市内の観光を楽しめたという感想が寄せられたそうです。
その後も、2025年6月の「UDA Digital Trial 2025」でシニアの参加を歓迎するHADO体験会を開くなど、市のデジタル体験事業の中でHADOを活用しています。
宿泊費などを共催団体が負担する公民連携の形は、財源に悩む自治体にとって参考になる進め方です。

出典:

  • HADO公式「【開催レポート】HADO全国大会2024『UDA CUP』」
  • 宇陀市「HADO無料体験会in宇陀市」
  • 一般社団法人公民連携推進機構「HADO全国大会の開催報告」

長野県中野市|高校の学校間交流と、市民が支えるeスポーツフェス

長野県中野市は、総務部企画財政課DX推進係が担当となり、HADOを学校間の交流と市民参加の場づくりに活用しています。
2026年7月4日には、再編が進む中野立志館高校と中野西高校の生徒を対象に、学校間の交流とキャリア教育を兼ねた「学校間交流HADO体験会」を開きました。
当日は学生スタッフが運営を担い、中野立志館高校の文化祭にあわせて一般向けの体験会も行われています。
市はさらに、2026年10月25日に中野市民会館ソソラホールで、HADOを中心とした第2回の「中野市eスポーツフェス」を開く予定です。
子どもから高齢者までがともに楽しめ、若年層の地域参画やICT教育の推進を目指す地域一体型のイベントと位置づけ、当日の運営ボランティアを市内の高校生や市民から募っています。
参加者には、市民参画ポイントを付与する仕組みも用意しました。

出典:

  • 中野市「令和8年度中野市eスポーツフェス『当日運営ボランティア』募集について」

東京都豊島区|旧保健所跡地の若者の居場所で「eスポーツ」として導入

東京都豊島区は、旧保健所の建物を活用した子ども・若者の居場所に、HADOを「eスポーツ」として導入しています。
旧池袋保健所の仮庁舎を暫定活用した「IKEROOT(イケルート)」は、2026年7月18日に開設されました。
2階のアーバンスポーツエリア「裏トシマ」は、区内在住・在学の小中高生が無料で利用でき、屋内スケートボードやパルクール、ダンス、eスポーツを体験できる場所です。
HADOは同年8月20日にこの施設の「eスポーツ」コンテンツとして正式に導入され、eスポーツを実施する日に体験できます。
区は見守りの体制を整え、初回の利用時には保護者の同伴か同意書を求めるなど、安心して過ごせる環境づくりにも配慮しています。
使われなくなった公共施設を暫定的に生かし、体を動かすeスポーツを居場所づくりに組み込んだ点が、この事例の特徴です。

出典:

  • 豊島区「新たな子ども・若者の居場所『IKEROOT(イケルート)』が旧池袋保健所跡地に誕生!」
  • 豊島区「アーバンスポーツエリア『裏トシマ』がオープンします!」

東京都中野区|教育支援室で不登校の子どもを含む小中学生が体験

東京都中野区では、区教育委員会の教育支援室で、不登校の子どもを含む小中学生がHADOを体験しました。
なお、前述の長野県中野市とは別の自治体です。
教育支援室「フリーステップルーム」は、学校に行きづらさを感じている小学1年生から中学3年生が学習や体験活動に取り組む居場所で、区は体験的な学びとして、運動や演劇などとともにeスポーツも取り入れています。
プログラムは全2回で、参加者はチーム対戦型のアクティビティに取り組みました。
体験後のアンケートでは、約90%が「楽しかった」「またやりたい」「自分にもできた」と答え、「他の人と話せた」という回答も約60〜80%ありました。
以前、ある親御さんから「うちの子は不登校で引きこもりがちだったけれど、HADOに出会って外出するようになり、他の子と人間関係を築けるようになった」と言われたことがあります。
こうした話は珍しくなく、HADOは子どもも大人も関係なく、内にこもりがちな人が外に出るきっかけになるコンテンツでもあると感じています。

出典:

  • 中野区「フリーステップルーム(教育センター)」
  • 株式会社meleapのプレスリリース(PR TIMES)

HADOは、地域交流や健康づくりのイベント、公共施設での体験会など、目的に合わせた企画から相談が可能です。
自治体での活用を検討している方は、HADOのイベント利用ページで利用シーンや導入までの流れを確認してみましょう。

自治体のeスポーツ事業を一過性で終わらせない方法

自治体のeスポーツ事業を一過性で終わらせない方法

政策目標と評価指標を先に決め、官民の推進体制と住民の担い手を育てて、定例の場につなげることが大切です。
先行自治体の取り組みから、事業化の順番に沿って5つのステップで紹介します。

1. 担当課の政策目標と成果指標を先に決める

最初に決めるべきなのは、どのゲームを使うかではなく、どの行政課題の解決に使うかという点です。
小松市は、明確な担当課がない中でまず企画部門が担当し、全国の取り組みを調べたうえで、行政課題としても明らかだったフレイル予防に目的を絞りました。
目的をはっきりさせていたことなどから、庁内の合意形成もスムーズに進んだといいます。
成果指標は、参加者数に加えて満足度や再参加の意向、継続参加率など、目的に合うものを選びましょう。
伝え方も、参加の広がりを左右します。
小松市は高齢者向けの広報で「eスポーツ」という言葉を使わず、「ゲームで遊ぶ」「太鼓の達人で遊ぶ」と伝えていました。
私自身も、「新しいスポーツを作りたい」と伝えても、「新しいスポーツだからやってみたい」と手を挙げる人は少なかった経験があります。
そこで、「家族と楽しい時間を過ごしたい」「楽しく運動習慣を身につけたい」といった人たちに目を向けて、体験の設計を模索しました。
住民が参加したくなる動機から逆算して、目的と伝え方をそろえることが大切です。

2. 庁内外の関係者で推進体制をつくる

eスポーツの事業は自治体だけで完結しないため、民間や関係団体と組む推進体制を早めにつくる必要があります。
東京市町村自治調査会も、民間との連携が必要だとしたうえで、目的を明確にして実施体制を築くことを勧めています。
栃木県は2026年6月15日、県と県内の25市町、eスポーツ関係団体、民間企業、福祉・スポーツ関係団体、大学が参加する「栃木県eスポーツ推進協議会」を設立しました。
情報の共有や関係者の連携を進めるとともに、市町や民間企業などが行うeスポーツイベントへの助成も始めています。
eスポーツを担当する部署は自治体によってさまざまで、スポーツ振興課や高齢福祉課のほか、企画部門やDX推進の部署が担う例もあります。
小松市では、企画部門で始めた事業を、軌道に乗った段階で高齢者施策の担当課へ移す予定を立てていました。
最初から担当課を1つに決めきれない場合は、企画部門が旗振り役となり、関係課を巻き込む体制から始めるとよいでしょう。

出典:

  • 栃木県「本県のeスポーツを活用した地域活性化の取組について」
  • 東京市町村自治調査会

3. 住民を「支える側」として巻き込む

行政の職員だけで運営を続けるのは難しいため、住民に講師役や運営役を担ってもらう仕組みが欠かせません。
東京市町村自治調査会の調査でも、事業を実施している自治体の課題として人員や予算の不足が挙げられました。
西東京市は、講座の盛り上げ役を担う「健康デジタル指導士」の養成研修を設け、2023年8月時点で62名が受講し、51名がボランティアとして登録しています。
ボランティアが講座を運営することで、限られた予算の中でも多くの講座を開ける体制をつくりました。
小松市は地元のNPOに講座を委託し、大学のゲームサークルの学生もボランティアとして加わっています。
学生と高齢者が一緒に遊ぶ場は、多世代交流の機会にもなりました。

4. 単発のイベントを定例の場やリーグにつなげる

1回のイベントで終わらせないためには、次に参加する理由を最初から用意しておくことが重要です。
群馬県は、企業や団体が参加する社会人リーグ「GUNMA LEAGUE」を2021年から開いています。
東京都は、既存のシニア交流大会にeスポーツを種目として加えました。
調布市は、事業で整備した機材を施設が使い続けられるようにし、子ども関連施設の一部では、施設が自ら取り組みを続ける環境が整いました。
HADOでも、スポーツとして面白いのは大前提ですが、コミュニティに魅力を感じて通ってくださる方が多いです。
試合に向けてプレイヤーが入念にトレーニングをすることも珍しくなく、それが私にとっては非常に印象的です。
大会や練習会など、参加者どうしが再び集まる場を用意すると、事業は単発の「イベント」から続く「活動」に変わります。
新しい体験が話題だけで終わってしまう理由は、新しいアクティビティは、なぜ「話題化」はしても「事業化」できないのか?で掘り下げているので、あわせて読んでみましょう。

5. 県の補助制度や企業協賛など財源の選択肢を確認する

財源は一般財源だけに頼らず、補助制度や交付金、企業の協力を組み合わせて確保する例が目立ちます。
東京市町村自治調査会の報告書(調査時点は2023年度)に掲載された事例の予算と財源は、次のとおりでした。

自治体 事業 予算の規模 主な財源
西東京市 高齢者向けの講座 764万円(2023年度) 東京都の高齢社会対策区市町村包括補助事業(補助率10分の10)
調布市 施設内・施設間の交流 1,416万円(2023年度) 東京都の子供・長寿・居場所区市町村包括補助事業(補助率10分の10)
横須賀市 高校eスポーツ部の支援など 2,000万円超(2023年度) 国の交付金(当時の名称はデジタル田園都市国家構想交付金)、県の補助金、企業版ふるさと納税
小松市 高齢者サロンへの出張講座 年間100万円程度 市の一般財源
愛媛県 障害者施設への導入支援 約678万円(2023年度) 県の基金

西東京市、調布市、横須賀市は、補助金や交付金などを組み合わせることで、自治体の一般財源から持ち出さずに事業を進めていました。
都道府県の支援策も確認しておきましょう。
令和8年度分の交付要綱によると、富山県の補助金は補助率が3分の1以内で、県外在住の参加者が30名以上などの要件を満たすと2分の1以内になり、上限額はイベントの参加人数に応じて50万円から300万円までの4段階です。
栃木県も、市町や民間企業などのeスポーツイベントへの助成を始めました。
企業の協賛を得る方法もあり、埼玉県のリンクフェスや神奈川県のシニア向け全国大会は、企業の協賛を受けて開かれています。
宇陀市のUDA CUPのように、共催団体が参加者の宿泊費を負担する公民連携の形もあります。

出典:

  • 東京市町村自治調査会
  • 富山県「eスポーツ関係人口創出事業補助金交付要綱」

定例開催を見据える場合は、機材を借りて地域の担い手と一緒に運営する方法も選択肢のひとつです。
HADOの機材の貸し出しについては、HADO機材レンタルのページで紹介しています。

自治体がeスポーツ事業を進めるときの注意点

自治体がeスポーツ事業を進めるときの注意点

ゲーム依存への懸念に根拠と対策で答え、タイトルの利用条件や個人情報、会場の安全を事前に確認しましょう。
いずれも、議会や保護者、住民から質問を受けやすい項目です。

ゲーム依存を心配する声には根拠と対策をセットで示す

ゲーム依存への懸念には、先行事例の実態と、自分たちの事業で講じる対策をあわせて示すのが効果的です。
東京市町村自治調査会は、取材した先進事例でゲーム障害が取り組みの課題になったケースはなかったとしています。
ただし、eスポーツと称した取り組みを行うと質問が寄せられる可能性はあるため、基礎的な情報を把握しておく必要があると指摘しました。
先行自治体では、次のような対策がとられています。

  • 西東京市:参加者が実際に集まることを条件にし、講座の時間も区切っている
  • 愛媛県:障害者施設が利用時間をおおむね30分から1時間程度に設定し、県の大会では専門家による講義も実施
  • 江戸川区:利用時間の制限、ゲームタイトルの対象年齢の設定、指導員の配置
  • 横須賀市:部員が自ら活動時間などのルールを決めて運用

横須賀市では、保護者から、自宅よりも学校の部活動のほうがゲームへの取り組みを管理されていて安心できると評価されているそうです。
群馬県はゲーム依存対策をeスポーツ推進の柱の1つに位置づけ、神奈川県もeスポーツのページにゲーム行動症(依存症)の情報と相談先を載せています。
事業の案内ページに相談窓口を併記しておくと、住民の不安にも応えやすくなるでしょう。

ゲームタイトルの利用条件を主催者の立場で確認する

eスポーツで使うゲームには権利者がおり、大会やイベントでの利用条件はタイトルごとに異なるのが実情です。
たとえば任天堂は、自治体などの公的機関のPRや広告・宣伝を目的とするゲーム大会などのイベントや、eスポーツに関連するイベントには、個別の許諾を行っていないと案内しています。
ただし、プログラミング教育や健康促進の目的で特定のタイトルを使う場合は、申請内容を確認したうえで許諾することがあるとしています。
主催者が自治体か、実行委員会か、委託先の民間事業者かによって扱いが変わる可能性もあるため、企画の早い段階で権利者の公式情報を確認しましょう。

出典:任天堂「法人・団体によるゲーム大会への個別許諾申請」

賞金や景品を出す場合は関係法令を確認する

大会の賞品に地域の特産品などを用意する場合も、景品表示法などの関係法令への配慮は欠かせません。
富山県の補助制度では、賞金・賞品代や飲食代を補助の対象外としたうえで、実績報告の際に、イベントの内容が景品表示法や刑法(賭博罪)、風俗営業法などに抵触しないことについて、関係官庁と協議した記録の提出を求めています。
賞品や参加費を設定する場合は、企画の段階で関係法令を確認し、必要に応じて関係機関に相談しておくと安心です。
eスポーツの賞金の考え方は、eスポーツの賞金はいくら?の記事でも紹介しています。

参加者の個人情報や撮影・配信の同意を取っておく

eスポーツのイベントは配信や広報写真と相性がよい反面、参加者の顔や名前が外部に出る場面が増えます。
撮影や配信を予定している場合は、申し込みの段階で目的と公開範囲を示し、参加者の同意を得ておきましょう。
未成年が参加する場合は、保護者の同意も確認しておくことが大切です。
豊島区の「裏トシマ」では、初回の利用時に保護者の同伴か、保護者が記入した同意書の持参を求めています。

体を動かす種目は会場の広さと安全対策を確認する

体感型eスポーツでは、プレイする人が会場内を動き回るため、会場の広さと安全面を事前に確かめておく必要があります。
プレイスペースのほかに、機材置き場や順番を待つスペース、観戦用の画面を置く場所も考えておきましょう。
当日は動きやすい靴での参加を案内し、ヒールやサンダルは避けてもらうと安心です。あわせて、イベント保険の手配も検討しましょう。
HADOを出張で実施する場合、主催者側では電源とインターネット環境、観戦用モニターを用意します。プレイスペースとは別に、機材置き場と待機スペースも必要です。

自治体のeスポーツ活用に関するよくある質問

自治体のeスポーツ活用に関するよくある質問

最後に、自治体のeスポーツ活用について、よく調べられている4つの質問に答えます。

eスポーツが盛んな県はどこですか?

公式な順位はありませんが、専門部署を置く群馬県や、県と全25市町が協議会に参加する栃木県などが代表的です。
何をもって「盛ん」とするかの公式な指標はないため、推進体制や支援策の充実度で見るのが現実的です。

群馬県は2020年に専門部署を設け、社会人リーグや19歳以下を対象とした選手権、実況者の大会、ゲーム依存対策まで幅広く取り組んでいます。
このほか、独自の補助制度を持つ富山県や、eスポーツに取り組む障害者施設を64施設まで広げた愛媛県の取り組みも参考になります。
2019年の茨城国体では、文化プログラムとして都道府県対抗のeスポーツ大会が開かれました。

eスポーツは儲からないって本当ですか?

自治体事業は収益より政策効果で評価するのが基本です。交流人口や健康づくりなど、目的に合う指標で成果を測りましょう。

本記事で紹介した事例の多くは、入場料などの収益ではなく、フレイル予防や交流の創出といった政策目的の達成を目指しています。
予算の規模も、小松市のように年間100万円程度で続けている例から、国の交付金などを活用して2,000万円を超える事業を行った横須賀市まで幅があります。
事業の目的と規模を先に決め、それに見合う成果指標で評価することが大切です。

eスポーツで地域活性化はできますか?

できます。ただし単発の大会だけでは効果が続きにくく、地域の課題と結びつけて継続する仕組みが欠かせません。
富山県の関係人口の施策や、全国から参加者が集まった宇陀市の大会は、eスポーツを地域活性化につなげた例です。
続けるための具体的な方法は、前述の「自治体のeスポーツ事業を一過性で終わらせない方法」で紹介しています。

eスポーツを運営している企業にはどんな種類がありますか?

大会運営会社、通信・放送事業者、プロチーム、地域のeスポーツ団体、体感型コンテンツの提供会社などがあります。
このほか、ゲームの権利を持つゲーム会社や、機材を提供するPCメーカーも関係者です。
本記事の事例でも、中野市のeスポーツフェスは地元のケーブルテレビ局が運営を担当しており、小松市は講座を地元のNPOに委託していました。
体感型eスポーツを取り入れる場合は、弊社のHADOのように出張での実施や機材の貸し出しに対応しているサービスもあります。
出張型のイベントの仕組みを知りたい方は、出張イベントレンタルとは?も参考にしてみましょう。

まとめ

自治体のeスポーツ活用は、地域活性化から福祉、教育、結婚支援まで、幅広い行政課題に広がっています。
体を動かす体感型eスポーツを選べば、健康づくりやスポーツ施策とも結びつけやすくなります。
一方で、単発のイベントで終わらせないためには、次の点を最初から設計しておくことが大切です。

  • 担当課の政策目標と成果指標を先に決める
  • 庁内外の関係者で推進体制をつくる
  • 住民を「支える側」として巻き込む
  • 定例の場やリーグにつなげる
  • 補助制度や企業協賛など財源を組み合わせる

まずは自分の課が抱える課題を1つ選び、同じ課題に取り組む先行自治体の事例を調べるところから始めましょう。
小さな体験会で住民の反応を確かめ、そこから段階的に広げる進め方が現実的です。
体を動かすeスポーツを自治体の事業に取り入れたい場合は、体験会の企画から相談してみましょう。
HADOのイベント利用ページでは、地域交流や健康づくりなどの利用シーンと導入の流れを紹介しています。

 

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