2026.10.26

eスポーツ教育とは?学校で活用するメリット・デメリットと導入事例

eスポーツを学校の教育活動に取り入れる動きは、高校の部活動から小中学校の体育や探究の授業まで広がっています。
一方で、「本当に教育になるのか」「運動不足や依存につながらないか」と迷い、校内や保護者への説明に悩む先生もいるでしょう。

この記事では、eスポーツ教育の意味、学校で取り組むメリット・デメリット、授業・体育・探究・部活動・学校行事での活用方法を、公的な調査や実際の学校の事例とあわせて整理しました。
導入の手順やよくある質問もまとめたので、校内で検討する際の資料としても役立つ内容です。

私たちが開発した体感型eスポーツ「HADO」は、小学校から大学まで幅広い学校で取り入れていただいています。
そのため本記事では、座って操作するPC型のeスポーツと、身体を動かす体感型の違いにも踏み込んで解説します。

この記事の要点

・eスポーツ教育は、競技や運営を題材に思考力・協働する力・情報活用能力を育てる学びで、効果は目的・ルール・振り返りの設計で変わります。
・運動量の不足や保護者の理解、費用、指導体制が主な課題で、体育や全員参加の場面では身体を動かす体感型eスポーツも有力な選択肢です。
・導入は、目的と場面を決めて種目を選び、ルールと説明を整えたうえで、体験授業から小さく始めましょう。

eスポーツ教育とは

eスポーツ教育とは

eスポーツ教育とは、eスポーツの競技や大会運営を題材に、思考力や協働する力、情報活用能力を育てる学びです。
ゲームで遊ぶこと自体が目的ではなく、目標を決めて取り組み、結果を振り返る過程に教育的な価値があります。

eスポーツは、コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦を、競技として捉えるときの名称です。
学校では部活動や専門コース、授業、学校行事など、さまざまな形で取り入れられています。

競技に取り組む過程で、考える力や協働する力を育てる教育活動

eスポーツ教育で重視されるのは、勝敗そのものより、勝つために考え、仲間と協力する過程です。
対戦では、相手の動きを予測して作戦を立て、役割を分担し、試合後にうまくいかなかった理由を話し合う場面が繰り返し生まれます。

こうした過程は、学習指導要領が重視する「主体的・対話的で深い学び」とも重なる部分が多い活動です。
教育団体のNASEF JAPAN(国際教育eスポーツ連盟ネットワーク日本本部)も、eスポーツをただプレイさせるのではなく、学習や教育を促進するためのツールとして活用し、社会性や情動性を育む社会的感情学習などの教育を支援しています。

そのため、成果を左右するのは使うゲームの種類よりも、目的と振り返りの設計です。

ゲーム遊びとの違いは「目的・ルール・振り返り」があること

家庭での自由なゲームと教育としてのeスポーツの違いは、目的・ルール・振り返りの3つがそろっているかどうかにあります。

  • 目的:何の力を伸ばすのか、何をめざすのかが決まっている
  • ルール:活動時間や役割、マナー、扱うタイトルが決まっている
  • 振り返り:試合後に作戦や行動を言葉にし、次に生かす時間がある

時間を決めずに一人で遊び続ける状態は、教育活動とは別のものとして区別すべきです。
全国PTA連絡協議会も、ゲームを使えば教育効果があると一律に考えず、指導内容や運営体制を確認する必要があると呼びかけています。

ゲームを教材にする学習(ゲームベース学習)とは区別して考える

教育版マインクラフトのようにゲームそのものを教材にする学習と、競技としてのeスポーツは、ねらいが異なります。

ゲームベース学習は、ゲームの中で教科の内容を学ぶ方法です。
たとえば『桃太郎電鉄 教育版』は、地理や経済を題材にした教材として、学校向けに無償で提供されています。
一方のeスポーツ教育は、対戦や大会運営を通じて、考える力や協働する力、情報活用能力を育てることに重点を置いています。

どちらも学校で活用されていますが、目的を混同すると、導入後に「何を評価すればよいのか」がぼやけてしまいます。
検討の最初に、どちらを導入したいのかを整理しておきましょう。

身体を動かす「体感型eスポーツ」も学校の選択肢に加わっている

近年は、画面の前に座って操作する形だけでなく、身体を動かして対戦する体感型のeスポーツも学校で使われています。

体感型eスポーツは、ARやセンサーなどの技術を使い、プレイヤーの身体の動きがそのままプレイになる競技です。
私たちが開発した「HADO」もその一つで、ヘッドセットとアームセンサーを装着し、コートを動きながらエナジーボールやシールドを使ってチームで対戦します。

ゲームの戦略性とスポーツの身体性をあわせ持つため、体育や学校行事でも活用しやすい点が体感型の強みです。
PC・ゲーム機型と体感型では向いている場面が異なるため、使い分けは後半の活用方法の章で整理しました。

eスポーツにどのような種目があるかは、eスポーツの種目とは?代表的なジャンルや競技タイトルをわかりやすく紹介で詳しく紹介しています。

eスポーツ教育が学校で注目されている背景

eスポーツ教育が学校で注目されている背景

部活動や大会が広がったことに加え、デジタルを生かした学びや、運動が苦手な子も楽しめる体育が求められているためです。
ここでは、学校現場でeスポーツへの関心が高まっている理由を、データや国の方針とあわせて3つに整理しました。

部活動や全国大会が広がり、生徒が取り組む場が増えたから

高校を中心にeスポーツ部が増え、全国規模の大会も開かれるようになったことが、関心が高まった1つ目の理由です。

時事通信は2024年、「eスポーツ部」などがある学校の数が3年間で18倍以上に増えたと報じました。
教育現場のeスポーツ活動を支援するNASEF JAPANは、2026年8月の発表で、全国750校を超える高校が加盟していると公表しています。

2019年に始まった「STAGE:0」や、2023年に始まったNASEF JAPANの全日本高校eスポーツ選手権は、高校生が出場できる全国大会の代表例です。
運動部や文化部と同じように、日々の練習の成果を発揮する場が整ってきたことで、学校として向き合う必要性も高まりました。

出典:時事ドットコム「3年で18倍、急増する『eスポーツ部』」、NASEF JAPAN

情報活用能力や探究的な学びを重視する教育改革と重なるから

国がデジタル技術を生かした探究的な学びを後押ししていることも、eスポーツを教育に生かす発想を広げています。

文部科学省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」は、情報・数学等の教育を重視し、ICTを活用した探究的・文理横断的・実践的な学びに取り組む高校の環境整備を支援する事業です。
令和8年度の補助額は、新規校で1校あたり1,000万円(100校程度)と示されています。

さらに2026年2月には、2040年に向けた高校教育改革の基本方針として「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」が公表され、文理横断的な学びに取り組む普通科高校の割合を100%にするといった目標が掲げられました。
小中学校でも、GIGAスクール構想によって1人1台端末の環境が整い、デジタル機器を使った学びが日常になりつつあります。

なお、補助の対象になるかどうかは事業の目的や要件によって決まるため、個別に確認しておきましょう。

出典:文部科学省「令和8年度 高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」、文部科学省「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」

運動が苦手な生徒も参加できる体育や活動が求められているから

子どもの体力が回復しきらないなか、運動が苦手な子も楽しめる体育づくりが課題になっていることも背景の一つです。

スポーツ庁の令和7年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では、体力合計点が前年度から向上した一方、中学校男子を除いてコロナ前の水準には至っていないことが示されました。
同じ調査で、体育の授業を楽しくないと感じる児童生徒は、「できなかったことができるようになったら」「自分に合ったペースで行うことができたら」授業が楽しくなると答える割合が高い結果でした。

平成29・30年に改訂された中学校・高校の学習指導要領も、体力や技能の程度、性別や障害の有無等にかかわらず運動やスポーツの多様な楽しみ方を共有できるよう、「共生」の視点を踏まえて体育の内容を改善しています。
一人ひとりの条件を調整しやすいデジタル技術は、こうした課題に応える手段として注目されているものの一つです。

出典:スポーツ庁「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果について(概要)」

学校でeスポーツ教育に取り組むメリット

学校でeスポーツ教育に取り組むメリット

思考力や協働する力、情報活用能力が育つ機会があり、運動の得意・不得意に関わらず参加しやすい点が主なメリットです。
ただし、ゲームをすれば自動的に身につくわけではなく、目的・ルール・振り返りを設計してはじめて学びにつながります。
7つのメリットには、公的な調査や学校現場の声など、判断の根拠になる情報を添えました。

作戦を立てて試し、振り返る思考力が育つ

作戦を立てて試し、結果を見て修正する流れが試合ごとに繰り返されるため、考える力を鍛える機会が豊富です。
相手の動きを予測し、限られた時間や資源をどこに使うかを決め、うまくいかなければ手を変えるという判断を、短い時間で何度も経験できます。

文部科学省が実施した令和6年度の全国学力・学習状況調査では、課題の解決に向けて自分から取り組んだと考える児童生徒ほど、正答率が高い傾向が見られました。
この調査は相関を示したもので、eスポーツの効果を直接証明するものとは異なりますが、自分で課題に向き合い、試行錯誤する学び方の大切さを裏づける内容です。

振り返りの場面では、「なぜ負けたのか」を結果ではなく判断の理由から話し合うと、経験が整理されやすくなります。

出典:文部科学省「令和6年度全国学力・学習状況調査の質問調査の結果について」

役割分担と対話を通じて、協働する力が育つ

チーム戦のeスポーツは、役割分担や声かけが勝敗を左右するため、仲間と協力する経験を自然に積める活動です。
誰が攻めて誰が守るのか、いつ何を伝えるのかを短い言葉で共有できたチームほど、試合を有利に進められます。

スポーツ庁の令和6年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では、児童生徒が体育の授業を楽しいと感じるときとして、「できなかったことができるようになったとき」と並んで「友達と交流したり、協力できたとき」を挙げる割合が多いことが示されました。
仲間と協力できる場面をどうつくるかは、体育を含む学校の授業全体の課題でもあるのです。

PC型のeスポーツではボイスチャットを通じた画面越しの連携が中心ですが、体感型では同じ空間で顔を合わせて声をかけ合う点に違いがあります。

出典:スポーツ庁「令和6年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果の概要」

デジタル機器やデータを扱う情報活用能力が身につく

機器の操作や通信環境の準備、試合データの分析などを通じて、デジタル社会で必要な情報活用能力に触れる機会が増えます。
文部科学省は学習指導要領の総則で、情報活用能力(情報モラルを含む)を、言語能力と同様に「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけました。

その内容は、情報手段の基本的な操作から、情報の収集・整理・発信、プログラミング的思考、情報モラル、統計に関する力まで多岐にわたります。
eスポーツの活動では、PCや周辺機器の設定、回線トラブルへの対応、試合記録の集計、配信やSNSでの発信、チャットでのマナーなど、こうした力を使う場面が数多くあります。

教科書の上だけでなく、実際の困りごとを解決しながら身につけられる点が、eスポーツならではの価値です。

出典:文部科学省「新学習指導要領のポイント(情報活用能力の育成・ICT活用)」

「好き」を入り口に、学習意欲や学校での居場所が生まれる

生徒がもともと好きなゲームを入り口にできるため、学習への意欲を引き出しやすく、学校での居場所づくりにもつながります。

内閣府が2023年3月に公表し、現在はこども家庭庁に移管されている「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」では、15〜39歳を対象にした分析で、安心できる場所の数が多い人ほど、前向きな自己認識を持つ割合が高い傾向が見られました。
ここでいう場所は、自分の部屋、家庭、学校、職場、地域、インターネット空間の6つです。

好きなことを仲間と共有できる部活動やクラブが学校にあれば、運動部や文化部になじめなかった生徒にとって、新しい居場所の一つになり得ます。
「好き」と成果の関係については、スポーツ庁の令和7年度の調査でも、「運動は好き」と答えた児童生徒は、それ以外の児童生徒より体力合計点が高い結果でした。
いずれも因果関係を示すものではなく、実際に居場所になるかどうかは、活動のルールや指導者の関わり方にも左右される点を押さえておきましょう。

出典:こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」、スポーツ庁「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果について(概要)」

運動能力や性別、言葉の違いを越えて同じルールで競える

eスポーツは体格や筋力の差が結果に直結しにくく、性別や学年、話す言葉が違う生徒同士でも同じルールで競えます。
オンラインでつながれば、離れた地域や海外の学校とも対戦できます。

サッカーやバスケットボールなど一般的なスポーツは基本的な運動能力が重要になり、筋力や持久力、体格が優れている人が有利になります。
一方でHADOは、運動能力が高くなくても、戦術やチームワークなどでカバーできるスポーツです。
エナジーボールの速さや大きさ、シールドの強さといったスキルを調整できるため、運動能力や体格によるハンデも生まれにくくなっています。

言語の壁がないことも、HADOが海外に広がった要因の一つでした。
DXハイスクールの取り組みとしてHADOを導入した大阪府立福井高等学校の先生も、日本語指導が必要な外国にルーツのある生徒たちにとって、親しみやすいコンテンツになると考えたと話しています。

体感型なら、考える活動と運動量を同じ時間で確保できる

身体を動かす体感型のeスポーツなら、作戦を考える時間と身体を動かす時間を、1回の授業の中で両立できます。
座ってプレイするeスポーツでは、どうしても運動量の確保が課題になります。

HADOを体育の授業で実施した郡山ザベリオ学園小学校の先生は、待っている間にチームごとに作戦を立てさせた授業について、「作戦を立てる際はかなり思考しており、運動量も確保できます」と振り返っています。
HADOのプレイヤーにも、普段はスポーツをしていなかったけれど、HADOを始めて運動習慣ができたとおっしゃる方は多いです。

ゲームが好きな気持ちを否定せずに運動の機会をつくれる点は、学校にとっても大きな利点です。

大会運営や配信を担い、「支える側」の仕事を体験できる

プレイヤーとして競うだけでなく、大会の運営や実況、配信、データ分析など「支える側」の役割を経験できる点もメリットです。

スポーツ庁の令和7年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では、運動やスポーツを「する」「みる」「支える」「知る」「集まる・つながる」といったさまざまな関わり方に興味や関心がある児童生徒は、それ以外の児童生徒より体力合計点が高いという結果が出ました。
プレイが得意でない生徒も、運営や記録、広報などの役割で活躍の場を持てるため、関わり方の選択肢が広がります。

大会の運営や配信、映像制作、データ分析、チームのマネジメントなど、eスポーツを支える仕事は幅広く、キャリア教育の題材としても活用できます。

学校でeスポーツ教育に取り組むデメリット

学校でeスポーツ教育に取り組むデメリット

運動量の不足、保護者の理解、機材や回線の費用、指導体制、扱うタイトルの判断が、学校で導入する際の主なデメリットです。
いずれも、事前にルールや体制を整えることで軽減できます。導入を決める前に、自校で起こりやすい課題を確認しておきましょう。

座って画面を見る時間が増え、運動量が不足しやすい

PC・ゲーム機型のeスポーツは座ったまま長時間続けられるため、活動が増えるほど運動量が不足しやすくなります。

スポーツ庁の令和7年度の調査では、平日に学習以外で画面を見る時間(スクリーンタイム)が3時間以上の児童生徒の割合が、小中学校の男女ともに増加傾向にあると報告されました。
スクリーンタイムとは、テレビやスマートフォン、ゲーム機器などの画面を見る時間のことです。

部活動として取り組む場合は、練習時間の上限や休憩の取り方、身体を動かす時間を、あらかじめ活動計画に組み込んでおきましょう。
体育の授業や全員が参加する行事で使う場合は、身体を動かす体感型を選ぶ方法もあります。

長時間化や依存への不安から、保護者の理解を得にくい

「ゲームばかりにならないか」という不安は根強く、保護者や同僚の理解を得ることが導入の壁になるケースは少なくありません。

NASEF JAPANと筑波大学スマートウェルネスシティ政策開発研究センターが2022年に加盟校の顧問教員を対象に行った調査でも、学校内や保護者の理解を得るのが難しいという意見が多く見られました。
WHOの国際疾病分類(ICD-11)にゲーム障害が位置づけられたことも、保護者が慎重になる理由の一つと考えられます。

不安を頭ごなしに否定するのではなく、活動の目的や時間のルールを具体的に示すことが、理解を得る近道です。
保護者への説明の仕方は、後半のよくある質問で詳しく紹介しています。

出典:NASEF JAPAN「共同研究『日本の高校教育におけるeスポーツ活動の実態と課題』」

PC・回線・設置場所の整備に費用と手間がかかる

PC型のeスポーツに本格的に取り組むには、ゲームに対応したPCやモニター、周辺機器、安定した回線と設置場所が必要です。
台数が増えるほど費用はかさみ、故障時の対応や保管場所の確保といった運用の手間も生じます。

学校の回線にはセキュリティのためのフィルタリングや通信の制限がかかっていることもあるため、ゲームの通信やアップデートに対応できるかを、情報担当の教員や回線を管理する部署と導入前に確かめておきましょう。

競技タイトルによって求められる機器の性能も異なるため、扱うタイトルを決めてから機材を選ぶ順番が失敗を防ぎます。

ゲームに詳しい指導者がいないと、顧問の負担が大きくなりやすい

顧問の教員がゲームに詳しいとは限らず、練習の指導や大会への引率、機材管理まで担うと負担が大きくなりがちです。

前述の調査では、64.7%の高校が部活動の指導方針を定めていました。
方針づくりは顧問が担うとしても、ゲームの技術指導まで一人で抱える必要はなく、外部の力を借りる方法もあります。
2017年に制度化された部活動指導員や外部のコーチを活用すれば、顧問は安全管理や活動全体のマネジメントに集中できます。

NASEF JAPANは2026年7月、学生eスポーツの指導に必要な知識・技術・態度を学び、指導者としての能力を可視化する「eスポーツ人材育成能力認定制度」を創設しました。

外部の指導者を選ぶ際の目安として、こうした制度の活用も検討できます。

扱うタイトルの年齢区分や表現内容を、学校として判断する必要がある

ゲームのタイトルには対象年齢の区分があるため、学校で扱う場合は表現内容が生徒の発達段階に合うかを判断する必要があります。

たとえば家庭用ゲームのCEROの年齢区分は、A(全年齢対象)、B(12才以上対象)、C(15才以上対象)、D(17才以上対象)、Z(18才以上のみ対象)の5段階です。
PCや配信サービス向けのタイトルでは、別の年齢区分が表示される場合もあります。

部活動で採用されることの多いタイトルにも、銃撃の表現を含むシューティングゲームがあるため、授業や部活動で扱う前に、表現内容とチャット機能、ゲーム内課金の有無を確認しておくことが大切です。
保護者への説明でも、なぜそのタイトルを選んだのかを示せるようにしておきましょう。

ゲーム障害や目・姿勢への影響など健康面の詳しい情報は、eスポーツのメリット・デメリット15選|教育と健康の影響も解説で解説しています。

学校で使われている体感型eスポーツ「HADO」とは

学校で使われている体感型eスポーツ「HADO」とは

HADOは、AR技術を使い、実際に身体を動かしながらチームで対戦する、私たちmeleapが開発した体感型eスポーツです。
学校での活用も広がり、世界2,000校以上で体育や探究、部活動などに取り入れられています。展開国は40カ国、累計プレイヤー数は約1,000万人です。
ここでは、学校で使う際に知っておきたい仕組みと運用の特徴を紹介します。

ヘッドセットとアームセンサーを着けて、コートを動きながら対戦する

ヘッドセットとアームセンサーを着け、手を振ってエナジーボールを放ち、シールドで守りながら相手チームと対戦します。
エナジーボールやシールドは、ヘッドセット越しに現実のコートに重ねて表示されるため、ゲームの世界に入り込んだような感覚で動けるのが魅力です。

操作はコントローラーではなく自分の身体の動きなので、ゲームに慣れていない生徒でも始めやすくなっています。
また、物理的な接触がほとんどないため、フィジカルコンタクトのある他のスポーツと比べてケガをしにくい点も、学校で使ううえでの安心材料です。

スキルの設定と試合データが、作戦づくりと振り返りの材料になる

エナジーボールの速さや大きさ、シールドの強さといったスキルを設定でき、その組み合わせを考えること自体が作戦になります。
誰がどのスキルを選ぶかによってチームの戦い方が変わるため、試合前の作戦会議が欠かせない仕組みです。

試合後には、得点や命中率、防御数などの試合ログを確認できるため、データをもとに次の作戦を考える振り返りの材料になります。
エナジーボールやフィールドのデザインを生徒がカスタマイズし、オリジナルのコンテンツを制作するプロジェクト型の学習にも対応している点は、一般的なスポーツにはない使い方です。

体育館や多目的室に設置でき、教員研修を受けて授業で運用できる

HADOは大型の固定設備を必要とせず、体育館や多目的室など校内の既存スペースに機材を持ち込んで実施できます。
もともと、HADO ARENAのような専用施設だけでなく、スポーツジムのスタジオやイベント会場などでも、ミニマムなスペースと機材でプレイできるのがHADOです。

機材はヘッドセットやアームセンサー、マーカーなどで構成され、コートの広さも設定で変えられます。
導入時には、機材の操作や授業の進め方、安全管理、チーム編成、振り返りの方法などの教員研修を行う流れです。
研修後は、担当の先生が校内で継続して活用できる運用をめざしています。

HADOの学校・教育機関向けのページはこちら

eスポーツ教育の活用方法|授業・体育・探究・部活動・学校行事

eスポーツ教育の活用方法|授業・体育・探究・部活動・学校行事

情報の授業や体育、探究、部活動、学校行事、交流活動など、目的に応じて幅広い場面で活用できます。
場面ごとに向いているタイプとねらいを整理すると、次の表のとおりです。

活用場面 主なねらい 向いているタイプ
情報の授業 通信やデータ、情報モラルを身近な題材で学ぶ PC・ゲーム機型
体育 運動の得意・不得意に関わらず全員が参加する 体感型
総合的な探究の時間 データから仮説を立て、検証と改善を繰り返す PC・ゲーム機型、体感型の両方
部活動・同好会 大会を目標に、練習と振り返りを継続して重ねる PC・ゲーム機型、体感型の両方
学校行事 クラスや学年の一体感をつくる 体感型(観戦中心ならPC・ゲーム機型も)
地域・他校・海外との交流 世代や地域、国を越えて交流する PC・ゲーム機型、体感型の両方

HADOの場合も、小中学校では体育の授業のほか探究学習やICT学習として導入されることが多く、部活や修学旅行で活用いただくこともあります。
それぞれの場面での具体的な取り入れ方は、以下のとおりです。

情報の授業で、通信やデータ、情報モラルを学ぶ題材にする

情報の授業では、eスポーツを入り口に、通信の仕組みやデータの活用、オンラインでのマナーを身近な題材として学べます。

高校の「情報Ⅰ」は、「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」の4つの内容で構成される科目です。
たとえば、対戦ゲームで操作が遅れて伝わる現象を手がかりに通信の遅延を考えたり、試合の記録を集計して勝敗の要因を分析したりする授業が考えられます。

ボイスチャットやSNSでの言葉の選び方を振り返れば、情報モラルを自分ごととして考える機会にもなります。
教科の内容とゲームの経験を結びつけることで、生徒の関心を学習につなげやすくなります。

体育で体感型eスポーツを使い、誰もが参加できる授業をつくる

体育では、身体を動かす体感型のeスポーツを使うことで、運動が苦手な子も含めた全員が参加しやすい授業をつくれます。

中学校の学習指導要領の改訂では、体育分野で原則として男女共習が求められることも示されました。
走る速さや体格の差が結果に表れやすい種目では、得意な生徒にボールが集まり、苦手な生徒が見ているだけになる場面が生まれやすいのが課題です。

HADOであれば、スキルの設定で一人ひとりの条件を調整できるため、誰もが役割を持って試合に関わりやすくなります。
体育で使う際も、準備運動や周囲との距離の確保など、一般的なスポーツと同じ安全への配慮を忘れないようにしましょう。

総合的な探究の時間で、試合データから仮説を立てて検証する

総合的な探究の時間では、試合の結果やデータをもとに問いを立て、作戦を試して検証する学習に発展させられます。

文部科学省が示す探究の過程は、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の4つの段階です。
eスポーツなら、「どうすれば勝率が上がるか」という問いを立て、試合記録を集めて分析し、作戦を変えて再び試すという流れを、短い期間で何度も回せます。

HADOの場合は、得点や命中率、防御数などの試合ログをもとに、生徒が自分たちで仮説を立てて検証し、作戦を改善する授業も組み立てられます。
スポーツ、テクノロジー、健康、地域といった複数の分野から問いを立てられる点も、探究の題材として扱いやすい理由です。

部活動・同好会として、大会出場を目標に活動する

部活動や同好会では、大会への出場を目標に、練習と振り返りを継続して重ねる活動を設計できます。

2022年に行われたNASEF JAPANと筑波大学の調査では、eスポーツ部の活動頻度は平均で週3.34回で、85.1%の高校が大会への参加実績があると答えていました。
eスポーツ部の支援に取り組むNTTe-Sportsの担当者が現場を見て語った率直な感想も、「他の部活動となんら変わらない」というものでした。

ルールを把握して練習し、作戦を立てて大会に臨み、仲間とぶつかりながら人との関わり方を学ぶ流れは、運動部や文化部と同じです。
HADOでも、試合に向けてプレイヤーが入念にトレーニングをすることは珍しくありません。

部を立ち上げる際は、NASEF JAPANが公開している部活動マニュアルも参考にしましょう。

文化祭やクラスマッチ、修学旅行などの学校行事に取り入れる

文化祭やクラスマッチ、修学旅行などの学校行事に取り入れれば、学年やクラスの一体感をつくる企画として活用できます。

PC・ゲーム機型であれば、文化祭で校内大会を開き、実況や観戦まで含めて楽しむ企画も組めます。
運動が苦手な生徒も参加しやすい種目を探しているなら、クラスマッチや体育祭に体感型を取り入れる方法もあります。

修学旅行や校外学習では、生徒自身が体験しながら学べるプログラムへの関心が高まっており、2026年1〜4月に私たちへ寄せられた教育関係の問い合わせは、前年同期の約2.7倍でした。
体験に、AR技術や開発の背景を紹介する職業講話を組み合わせ、キャリア教育の要素を加えた例もあります。

地域や他校、海外の学校と交流する場として活用する

eスポーツは、オンラインや大会を通じて、地域の人や他校の生徒、海外の学校と交流する場としても活用できます。
横須賀市が主催する「YOKOSUKA e-Sports CUP」は、自治体が開いているeスポーツ大会の一例です。

HADOでは、日本・中国・韓国の小中学生が参加するジュニアの国際大会を開催し、試合を通じて国を越えた交流が生まれました。
世界の分断が指摘される中、スポーツを通じて国と国とのつながりをつくり、平和に貢献していきたいと私は考えています。

生徒が体験会を企画し、地域の子どもや保護者に教える側に回れば、学校の学びを地域に広げる活動にもなるでしょう。

運動が苦手な生徒も楽しめる学校行事の種目は、クラスマッチ・体育祭の種目30選|運動が苦手でも盛り上がる面白い競技でも紹介しています。
HADOを学校のどの場面で使えるか検討したい場合は、体育から修学旅行までのプログラムをまとめた学校・教育機関向けのページをご覧ください。

eスポーツ教育の導入事例

eスポーツ教育の導入事例

eスポーツ教育は、高校の部活動や通信制高校の専門コースから、小中学校の体育や探究の授業まで広がっています。
以下の8件のうち、最初の3件はPC・ゲーム機型、残りの5件は体感型のHADOを活用した学校の取り組みです。

学校・取り組み 学校種 活用場面 種別 ねらい
朋優学院高校 高校 部活動 PC型 大会を目標にチームで練習を重ねる
eスポーツ高等学院 通信制高校サポート校 専門コース PC型 高校卒業とeスポーツ・デジタルスキルの両立
全日本高校eスポーツ選手権 高校 全国大会 PC型 部活動の目標となる大会
郡山ザベリオ学園小学校 小学校 体育 体感型 主体的に楽しみながら学ぶ体育
つくば市立みどりの学園義務教育学校 義務教育学校 体育 体感型 全員が役割を持てるインクルーシブ体育
秦野市立本町中学校 中学校 体育(体つくり運動) 体感型 データ分析と指導役で思考と協働を育てる
大阪府立福井高等学校 高校 体育・学校行事 体感型 体験できるDX教材
福岡第一高等学校 高校 部活動 体感型 運動部の経験を問わず競技に挑む

放課後の部活動で全国大会をめざす(朋優学院高校)

東京都品川区の朋優学院高校のeスポーツ部は、放課後に週4回活動し、全国規模の大会で成果を上げてきた部活動です。
2018年の創立時はサークル活動として始まり、翌2019年には高校生向けの大会「STAGE:0」のリーグ・オブ・レジェンド部門で関東ブロック優勝、全国ベスト8となりました。

時事通信の取材に対し、部員の生徒は「このゲームはチームワークが大切」と話し、味方のミスも正直に指摘して修正する必要があると語っています。
記事によると、歴代部員の大半は入部時には初心者でした。

出典:時事ドットコム「3年で18倍、急増する『eスポーツ部』」

通信制高校のコースで、競技と高校卒業資格の取得を両立する(eスポーツ高等学院)

eスポーツ高等学院は、高校卒業資格の取得とeスポーツの学びを両立できる、通信制高校サポート校です。
通信制高校サポート校の中央高等学院とNTTe-Sportsが産学協同でつくったスクールで、プロの講師からゲームの技術やデジタルスキルを学べます。

ゲームの練習に加え、メンタルケアやボディーケア、アイケア、食育といった、競技を続けるための体調管理を学ぶプログラムも設けています。

世界経済フォーラムの記事では、この学校が不登校だった生徒の学校復帰に役立っていると、海外メディアの報道を引用して紹介されました。

出典:eスポーツ高等学院、世界経済フォーラム「学校教育への導入進むeスポーツを通じて、身に付くスキルとは」

全国の高校が参加する大会を、部活動の目標にする(NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権)

全日本高校eスポーツ選手権は、NASEF JAPANが主催し、全国の高校のeスポーツ部が参加する全国大会です。
第1回(2023年)は4部門に417校788チーム、第2回(2024年)は5部門に延べ573校976チームが参加しました。

第2回からは、エーペックスレジェンズやストリートファイター6も競技タイトルに加わっています。

2026年には第4回の開催も決まっており、部活動として取り組む高校にとって、練習の成果を発揮する分かりやすい目標です。

出典:NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権

作戦と振り返りを組み込んだ小学校の体育(郡山ザベリオ学園小学校)

福島県の郡山ザベリオ学園小学校では、HADOを体育の授業で実施し、作戦と振り返りを組み込んだ授業を行いました。
子どもたちが主体的に楽しみながら学べる体育を実現したいという、体育科の先生の思いから始まった取り組みです。

授業は「ルール説明→練習→チーム戦→ふりかえり」の流れで進み、児童が自ら作戦を立てて挑戦する姿が多く見られました。

授業後のアンケートで高評価をつけ、「また体験したい」と答えた児童は85%以上です。
先生は、想像以上に評価がよく、授業の運び方を工夫すればさらに充実した学びになりそうだと振り返っていました。

ARとAIで「誰一人取り残さない」体育を実践する(つくば市立みどりの学園義務教育学校)

つくば市立みどりの学園義務教育学校では、HADOとスクールAIを組み合わせ、誰も取り残さない体育に取り組んでいます。
児童生徒数約1900人、特別支援学級19学級を擁する大規模校で、従来の体育では「参加していても主体的に関われない」状況が生まれやすい点に着目したのが出発点です。

授業では、HADOのスキル調整と役割分担、AIによる客観的な振り返りを組み合わせ、運動の得意・不得意や障害の有無を問わず、全員が役割を持って関われる授業をめざしました。

2026年3月の次世代体育授業・教育実践発表会での報告によると、特別支援学級の児童全員が授業を楽しいと回答し、「運動は大変」から「運動は楽しい」へと意識が変わったとのことです。

この発表会は、スポーツ庁の令和7年度「令和の日本型学校体育構築支援事業」の成果も踏まえて開催されました。

同事業は東京学芸大学が受託し、私たちmeleapも協力企業として、XRを活用した体育授業の実証に参画しています。

データ分析と生徒の指導役を取り入れた体つくり運動(秦野市立本町中学校)

神奈川県の秦野市立本町中学校では、保健体育の「体つくり運動」でHADOを取り入れ、データ分析や作戦会議も行いました。
プレイするだけで終わらせず、思考力や協働性を育てる探究的な学びにつなげることがねらいです。

授業や運営の中では、生徒自身がインストラクター役を担い、課題を見つけて解決する経験も積んでいます。

地域の子どもや保護者を招いた体験会でも、生徒が主体的に指導役を務め、学校での学びを地域へ広げました。

「体験できるDX教材」として体育や行事に導入する(大阪府立福井高等学校)

大阪府立福井高等学校では、DXハイスクールの取り組みの一環として、HADOを「体験できるDX教材」として導入しました。
コンピュータやLAN教室の中で完結しないDX教材を探すなかで、AR技術を体験できることと、基本ルールがわかりやすく身体接触の少ないスポーツであることが導入の決め手でした。

体育の授業や学校行事での活用を想定し、複数のコートを同時に運用できる環境を整えたことで、待ち時間を減らした授業運営をめざしています。

今後は同好会・部活動での活用や、クラスマッチ、オープンスクールでの体験、他校との交流戦なども検討しているとのことです。

世界初のHADO部として部活動を立ち上げる(福岡第一高等学校)

福岡第一高等学校は2019年、HADOを部活動として世界で初めて正式に導入し、校内に練習用の常設教室も設けました。
運動部の経験がない部員が多い一方で、全国大会に出場するような運動部と対戦しても負けないというのが、監督の先生の言葉です。

HADOについては「身体能力差が影響しづらく、取り組みやすい最先端のスポーツ」と評価し、もともとコミュニケーションが苦手だった生徒が明るくなったことを保護者も喜んでいると語りました。

2022年には、HADOの最高峰の大会であるグランドスラム大会に出場し、公式ランキング2位のチームを破った実績もあります。

学校でeスポーツ教育を導入する手順

学校でeスポーツ教育を導入する手順

目的と活用場面を決め、種目を選び、環境・体制・説明を整えてから、体験授業で試すのが基本の流れです。

  1. 導入の目的と、活用する場面を決める
  2. 目的に合う種目(PC・ゲーム機型か体感型か)を選ぶ
  3. 機材・場所・回線と、予算の確保方法を確認する
  4. 指導体制と、活動時間や年齢区分などのルールを整える
  5. 保護者と校内に、目的と運営方法を説明する
  6. 体験授業で試し、振り返りをもとに年間計画へ広げる

いきなり本格的な部活動や機材の購入から始めるより、小さく試してから広げるほうが、校内の合意も得やすくなります。

導入の目的と、活用する場面を決める

最初に「何のためにeスポーツを使うのか」と「どの授業や活動で使うのか」を決めることが、導入を成功させる土台です。
部活動として継続するのか、授業の単元として扱うのか、学校行事で一度試すのかによって、必要な準備や予算、関わる教員の数は大きく変わります。

私自身、HADOを広げる過程で、「新しいスポーツを作りたい」と伝えても「新しいスポーツだからやってみたい」と手を挙げる人は少ないと感じたことがあります。
そこで「家族と楽しい時間を過ごしたい」「楽しく運動習慣を身につけたい」といった人に目を向けて、体験の設計を模索しました。
学校での導入も同じで、「新しいから」ではなく「生徒のどんな課題を解決したいのか」から考えることをおすすめします。

目的に合う種目(PC・ゲーム機型か体感型か)を選ぶ

目的が決まったら、座って画面で操作するPC・ゲーム機型か、身体を動かす体感型かを、活用する場面に合わせて選びます。

  • 情報の授業や、競技として大会をめざす部活動:PC・ゲーム機型が中心
  • 体育や全員が参加する学校行事:運動量と参加のしやすさから体感型が向いている
  • 探究や交流活動:テーマに応じてどちらも選べる

PC・ゲーム機型は大会や競技人口が多く、自宅でも練習できる一方、運動量の確保が課題になりやすい種目です。
体感型は運動量や対面のコミュニケーションを確保しやすい反面、専用の機材と一定の広さが必要で、大会や競技人口はまだ限られています。
部活動はPC型、体育は体感型というように、場面ごとに使い分けるのも一つの選択肢です。

機材・場所・回線と、予算の確保方法を確認する

種目が決まったら、必要な機材と設置場所、回線を洗い出し、どの予算でまかなうかを早めに確認しておきましょう。
PC型ではPCや周辺機器、有線でつなげる安定した回線が、体感型では専用の機材と、コートを確保できる体育館や多目的室などの広さが必要です。

高校であれば、DXハイスクールのように、ICTを活用した探究的な学びの環境整備を支援する国の事業もあります。
ただし、補助の対象になるかどうかは事業の目的や要件によって異なるため、公募要領や所管の教育委員会への確認が必要です。
補助金以外にも、後援会や保護者と協力して費用の一部をまかなった例があり、具体的な方法はよくある質問で紹介しています。

指導体制と、活動時間や年齢区分などのルールを整える

誰が何を担当するかという指導体制と、活動時間や扱うタイトルなどのルールを、活動を始める前に決めておきます。
顧問は安全管理や活動全体のマネジメントを担い、技術的な指導は部活動指導員や外部のコーチ、提供事業者の研修などを活用する分担が現実的です。

あわせて、次のようなルールを文書にしておくと運用が安定します。

  • 活動日と1回あたりの活動時間、休憩の取り方
  • 扱うタイトルと年齢区分の確認
  • ボイスチャットやSNSでの言葉づかい
  • 課金の禁止や個人情報の扱い
  • 体調不良や機材トラブルが起きたときの対応

学業との両立を条件にする場合は、その基準も最初に示しておくと、生徒と保護者の双方が納得しやすくなるでしょう。

保護者と校内に、目的と運営方法を説明する

導入前には、保護者と校内の教職員に、活動の目的と運営のルール、期待する学びを具体的に説明する場を設けましょう。
NASEF JAPANのコラムでは、eスポーツ部が「遊び」と見られやすい理由の一つとして、大会という分かりやすい目標や、そこに向けた指導の内容が周囲に伝わっていないことを挙げています。

練習計画や大会の予定、実際の授業風景を見せれば、活動の様子が具体的に伝わります。
私は建築学科で表現を学んだ経験から、人に伝わらないものは価値がないと考えています。
どれだけ良い活動でも、目的や成果が伝わらなければ理解は得られにくいため、導入後も授業の様子や生徒の振り返りを発信し続けることが大切です。

体験授業で試し、振り返りをもとに年間計画へ広げる

最初から本格導入するのではなく、単発の体験授業や学校行事で試し、生徒の反応を確かめてから年間計画に広げるのが確実です。
体験後には、生徒へのアンケートで楽しさや参加しやすさ、作戦を考えられたかなどを確認し、授業のねらいに沿った効果が見られたかを振り返ります。

その結果をもとに、どの学年のどの単元で使うのか、学校行事や部活動にどう広げるのかを年間計画として整理すれば、そのまま校内での説明資料としても使えます。
HADOでは、申請前の段階や単発の体験授業からの相談も受け付けており、授業案や年間活用案、機材構成と概算見積の提案まで対応可能です。

DXハイスクールなどの活用を検討している高校の先生は、N-E.X.T.ハイスクール構想・DXハイスクールの導入支援ページで、教科ごとの活用例や相談の流れを確認できます。
なお、制度への申請代行や採択の保証は支援の対象外です。

eスポーツ教育に関するよくある質問

eスポーツ教育に関するよくある質問

eスポーツ教育の導入を検討する際に出てきやすい4つの質問に、学校での活用の視点から答えます。

体育の授業として成立しますか?学習指導要領との関係は?

体感型のeスポーツであれば、単元のねらいと評価の観点を定めることで、体育の教材として扱えます。
中学校の学習指導要領は、体力や技能の程度、性別や障害の有無等にかかわらず運動の楽しみ方を共有できるよう「共生」の視点を示しており、スキルの設定で条件をそろえられるHADOは、この考え方と相性のよい教材です。

実際に、秦野市立本町中学校では保健体育の「体つくり運動」の授業でHADOを活用しました。

一方、座って操作するPC・ゲーム機型は体育の教材には向かないため、情報の授業や探究、部活動で扱うのが適切です。
どの領域に位置づけるかは単元の設計によって変わるため、学習指導要領解説で各領域のねらいを確認したうえで計画しましょう。

小学校でもeスポーツ教育を導入できますか?

体感型なら操作が直感的なため、体育や学校行事として小学校でも導入でき、実際に授業で取り入れている例があります。
中野区立白桜小学校で5年生を対象に行ったHADOのトライアル授業では、授業を「とても楽しかった」「楽しかった」と答えた児童が98.5%にのぼりました。

普段の体育を好きではないと答えた児童も全員が「とても楽しかった」と回答し、「チームで勝つための作戦を考えることができた」と答えた児童も81.8%でした。
一方、PC・ゲーム機型のタイトルには年齢区分があるため、小学校で扱える範囲は限られる点に注意が必要です。

四国中央市立川之江小学校のように、HADOを体育の授業に正式導入した小学校もあります。
低学年での実施方法や機材の扱いは学校の状況によって変わるため、事前に個別で相談するのが確実です。

ゲーム依存を助長しませんか?保護者にはどう説明すればよいですか?

活動時間や休憩、扱うタイトルのルールを決め、目的と振り返りまで設計すれば、依存の助長は防ぎやすくなります。

WHOの国際疾病分類(ICD-11)におけるゲーム障害は、ゲームをコントロールできない、ほかの生活上の関心事よりゲームを優先する、問題が起きてもゲームを続けるといった状態が原則として12か月以上続き、生活に著しい支障が出ている場合に診断される疾病です。
プレイ時間の長さだけで判断されるものとは異なる点を、まず押さえておきましょう。

保護者への説明では、活動の目的、時間と扱うタイトルのルール、振り返りや成果を発表する場の3点を具体的に伝えると、不安を確認事項に変えやすくなります。
NASEF JAPANと筑波大学の調査でも、eスポーツ部の顧問の多くが、挨拶や他者への尊重、学業との両立を重視して指導していました。
家庭と学校で同じルールを共有しておけば、学校の活動が家庭でのゲームとの付き合い方を見直すきっかけにもなるでしょう。

導入費用はどのくらいですか?補助金は使えますか?

費用は種目や機材の数、実施方法で大きく変わり、補助金も事業ごとに対象や要件が異なるため、個別の確認が必要です。
PC型では台数分のPCや周辺機器、回線の整備が、体感型では専用の機材と導入時の研修などが主な費用になります。

高校の場合、DXハイスクールの令和8年度の補助額は新規校で1校あたり1,000万円ですが、対象は事業の目的に沿った経費に限られる点に注意しましょう。
郡山ザベリオ学園小学校では、後援会や保護者の協力を得て学園のバザーにHADOの体験ブースを設け、体験料の一部を導入費用に充てました。

先生は、体育の授業だけでは費用面で導入が厳しかったものの、バザーは多くの人にHADOを体験してもらう機会として最適だったと話しています。
HADOの具体的な金額は、人数や活用計画をうかがったうえで、必要な機材構成とあわせて概算見積としてご提案するのが基本の流れです。

まとめ

eスポーツ教育は、目的に合う種目を選び、ルールと振り返りを設計することで、学校の学びに生かせる教育活動です。
思考力や協働する力、情報活用能力を育てる機会がある一方、運動量の不足や保護者の理解、費用、指導体制といった課題もあります。

PC・ゲーム機型と体感型の違いを踏まえ、情報の授業や部活動、体育、探究、学校行事など、場面ごとに使い分けることが大切です。
導入は、目的と場面を決め、ルールと説明を整えたうえで、体験授業から小さく始めましょう。

2012年からダンスが中学校の保健体育で必修になったように、HADOの部活が創設されて子どもたちの全国大会が開催されたり、トッププレーヤーが進学に有利になったりするところまで広げていくことを、私は目指しています。
その土台になるのが、学校での一つひとつの体験です。

体育や探究、学校行事でHADOを試してみたい場合は、学校・教育機関向けのページから体験授業や導入の相談ができます。

東京2025デフリンピック応援

東京2025デフリンピックを応援しています。
みんなが楽しめる未来のスポーツを。